職場のカサンドラとは?―あなたはカサンドラ?

 
あなたはいま、仕事の同僚や上司についてこんなことで悩んでいませんか?

”もしかしたらこの人は仕事の優先順位をつけられないのではないだろうか?”
  ”どうしてこの人には、常識的なことが伝わらないんだろう?”
”こちらの優しさや思いやりをまるでわかってくれてないんじゃないだろうか?”
  ”なぜ仕事のやり方を変えるようにアドバイスしても、変えてくれないんだろう?”
”もしかしたら自分がかけている迷惑がまるでわかってないのではないだろう?”
  ”相手の立場になって考えることができないんじゃないのかな?”
”なぜ自分の立場をわきまえずに、こんなに腹立たしいことを言うのだろう?”
 ”もしかしたらこの人は発達障害なのではないか?”
”いったいどうしたらいいんだろう? このままだとこちらがおかしくなりそう”

そしてあなたは…
同僚や上司のミスの対応に追われ、本来やらなくてもいい仕事を背負わされたり、反省や感謝の気持ちを見せない当人の態度にとても大きなストレスを感じていませんか?
それ以外にも…
それまでの優しい態度をやめ、厳しく接したら、今度は恨まれるようになった。
社会人として自覚の感じられない、まるで子どものような態度にあなたはとまどい、どう接したらよいのかわからない。
どんなに努力してもあなたの大変さは伝わらない。疲れ果ててしまった。耐えられなくなって職場を辞めてしまった。そして今でも、相手を許せない気持ちや、反対にもっと自分がこうしていたら良かったのでは?とか、激しく怒ってしまった自分のことを責め続けていないでしょうか…?。

 もしあなたがこのような思いで苦しんでいるのなら、苦しんでいるのはあなた一人ではありません。障害者のための労働組合の書記長をしている久保修一氏の本には、同じようなケースで苦しんでいる方たちの事例が数多く紹介されています。
”…筆者がかかわった事例でも、「自分が笑いものにされている」といった被害妄想的な思い込みから周囲への攻撃や依存、他傷・自傷行為のせいで「手に負えない」「どうすればよいのかわからない」と頭を抱えている職場は数多くあります。
 さらに多くの担当者が、「トラブルの過程で、当事者であるメンタル疾患者の5倍もの従業員が精神的ダメージを受けて体調を崩したり退職したりしていると打ち明けます。つまり筆者が関わった200件のトラブルのうしろでは、1,000人の心優しい同僚たちがダメージを受けていると考えることもできるのです」”(『職場にいるメンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法』)

 このような思いで苦しむ人たちを、このサイトでは”職場のカサンドラ”と呼ぶことにしました。現在、発達障害や心に病気を持つ方が社会で働く機会が急激に増えるようになっています。社会で発達障害に対する理解が深まり、多様性を大切にする価値観が世の中に広まるとともに、国も彼らの就労を支援する制度を後押しするようになってきました。
 しかしその一方で、それを受け入れる職場では様々なトラブルが生じています。例えば、これまで身体障害者を積極的に受け入れてきたある特例子会社では、精神に疾患のある患者を一人雇ったところ、5人の身体障害者が退職してしまったというケースが前記の本で紹介されています。
”担当者の話によると、退職者の多くは身体障害者でした。メンタル疾患者とコミュニケーションをうまくとることができず、ささいなトラブルから職場全体がギスギスしてしまったようです。どう対処すればよいかわからないまま、いつまでもトラブルが解決せず、疲れ果ててしまった人から会社を去っていったのだと肩を落としました”(『職場にいるメンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法』久保修一著 日本法令)

 発達障害や心に病気を持つ方を社会が受け入れ、ともに働いていくことはとても素晴らしいことです。でも、そこで起きたトラブルについて発達障害や心に病気を持つ方は相談先がある一方で、彼らから加害者にされたり、深く傷ついたり、心の病になってしまった人たちが相談できる場所やサポートはほとんどありません。
 それに、相手が障害や病気を持っている場合、彼らの態度に怒りを感じたり、傷ついたと話すことがとても難しく感じられるかもしれません。自分の感じ方や、気持ちを表現することが、障害や病気を持つ人を非難したり、排除しているかのように感じられたり、自分の理解が足りないのでは、心が狭いのでは、アンガーマネジメントができてないのではと、自己嫌悪に陥ってしまうかもしれないからです。

 でも、多様性を大切にする社会ならば、障害者の側だけでなく、それに直接かかわる人たちの悩みや苦しみへの理解や、ケアも、同じくらい大切にされるべきです。お互いが公平と感じられ、尊重され、幸せを追求できるのが本来の多様性です。あなたが傷ついているのなら、その気持ちは大切にされ、話すことを許され、抱きしめらてもいいのです。

 HSPルーム鎌倉では、このような悩みで辛い思いを抱えている”職場のカサンドラ”たちが、自分の感情を大切にし、ケアできるためのミーティングや相談を始めることにしました。

 

参考文献:
『職場にいるメンタル疾患者・発達障害者と上手に付き合う方法』久保修一著 日本法令
『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』アメリカ精神医学会 医学書院
『発達障害の人が見ている世界』岩瀬利朗著 アスコム